雑誌の表紙に、RIGOLETTOという文字があった。
何故か目に留まる。
リゴレット。ヴェルディのオペラのタイトルで、主人公の名前でもある。
悪徳で名高いマントヴァ公爵のお気に入り、せむしで毒舌家の道化師の名前だ。
知った言葉のはずだが、不意に気づいた。このスペルはあまり名前らしくない。
イタリア語の辞書を調べると、rigolettoはロンドという意味だった。
道化師という商売柄、誰かがつけた仇名なのかも知れない。
一度は納得しかけて、疑問が浮かんだ。
どうしてヴェルディはこの名前を主人公につけて、タイトルにまでしたんだろう。
イタリア人で作曲家のヴェルディが意味もなくこんな名前を付けるとは考えられない。
「ロンド」を広辞苑で調べると、「主題が同一の調子で何度も繰り返す間に別の副主題を種々に挿む形式の器楽曲。」とあった。
何度も繰り返す主題。「リゴレット」でそれは、何だったろう。
6つ数えるくらいの間、考えて、思い当たった。苦い笑みが浮かぶ。
呪い、だ。
冒頭でリゴレットは、娘を弄ばれて怒り狂う貴族を嘲笑い、その貴族から呪いをかけられる。
呪いはリゴレットの頭を離れず、その後、リゴレットの大事な娘も弄ばれた時にも彼は例の呪いを思い出す。
復讐に燃えるリゴレットはそれによって娘を失い、そして最後は、呪いの重さに押しつぶされて泣き崩れるリゴレットの絶叫と共に幕が下りる。
知らぬ間に呪いのロンドの輪に引き込まれて踊らされ、すべてを失ってしまった人間。
どうやらそれが、リゴレットという名前の意味するものらしい。