夜の電車、乗り合わせた人の爪先が割れている。
地下足袋らしい。
二つに割れた爪先はひづめのようで、西洋人が見たらフォーンを連想するかもしれない。
指先が締め付けられないし、地面をつかんで歩いている感覚を持てるだろう。
少々羨むが、そこそこ混んだ電車のこと、間違って踏まれたら痛いのではないかと危ぶみもする。
そう考えると、私が電車に乗る時の履物として、地下足袋は選択肢に入ってこない。
足首近くまでおおう人工皮革の靴で、かかとは低め。それが長年の定番だ。
でも、それもこれもありではないかと思う。
大多数が地下足袋を履いていると硬い革靴の人が乗れないし、硬い靴の人ばかりだと柔らかい履物の人が危機感を抱く。
ある程度の多様性はきっと、あった方がいい。
要は、他の人は自分と違う履物を履いているかもしれないと、誰もが常に頭の片隅で思っていることが大事で、そういう人の集まった空間は多少混雑しても殺伐とした空間にはなりにくいのではないだろうか。
というか、そう信じたい。

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