朝起きて、床が冷たい。スリッパが要る。
春から下駄箱にしまいっぱなしだったスリッパを出す。
折りたたみ式スリッパなのは、階下に音が響かないようにだ。
普通のスリッパと違って底に芯がなく、足に触れる布と床に触れる不織布を接着して、周囲をパイピングで縫い合わせて底にしている。
これだと歩いても、足音が素足とほとんど変わらない。
薄いから、履いて暖かいものではない。ただ、寒さは遠ざかる。
寒い時期を過ごすためのものには、暖かくするのが目的のものと寒さを遠ざけるためのものとがある。簡単に言うと、暖房と防寒具だ。
となれば当然、暑い時期にも同じ機能のものがあるはずだ。
前者は冷房に違いないけど、後者を言い表す適当な言葉が見つからない。防暑具、とは言わない。言葉がないだけでなく、何となく、書いていて違和感がある。
しばらく考えて、気づく。
暑さは防御するものではなく、丁重に避けるものなのではないだろうか。そして涼しさにお越しを願う。
なら、納涼具とか避暑具のほうがまだしっくり来る。
類語辞典をひいて、「消夏」という言葉を見つける。夏の暑さをしのぐことだそうだ。
消夏器、も悪くないかもしれない。

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