4月29日、函館。「十字街」電停の付近には相当に歴史を背負っていそうな建物が、何の説明も無くひょいひょいと建っているのが函館の街のすごいところ。

ここらへんは、そのうちフイと取り壊されてしまったりするのだろうか。だとしたらいかにも惜しい話だ。地元の方にとっては日常の一部、こうした建物や街並みの価値はわかりにくかったりしそうである。

こちらは、一部ガイドブックには名前が載っているものの、観光資源として活用されているとは言い難い「函館市地域交流まちづくりセンター」。大正12年に創建された「丸井今井呉服店」の建物を改装したとのこと。

建物の外観も立派なものだが、魅力は何といってもエレベーター。昭和初期に製造された、70年以上の歴史を持つ「東北以北では最古のエレベーター」とのことで、ドアの開閉は手動。これがきれいに整備されており、職員の方にお願いすればいつでも誰でも搭乗できるのだ。

復元されたものなのか、真鍮製らしき部品もしっかり磨き込まれてキラキラと輝いており、メカニカルな面白さを抜きにしても見た目に十分楽しめる。ただ、5階まで上っても何があるわけでなく、乗って、下りて、また乗って1階に戻ってくるだけ。エレベーターに乗ることに意味があるのである。
これだけのものが無料で見学できるというのは、かえって申し訳ない気分だ。こういう場合、私はせめてお金を落としていこうと何か土産物を買ったり、寄付をしたりするのだが、まちづくりセンターという性格のため物販とかもなく、そうしたこともできなかった。
まちづくりセンターからは煉瓦街へと向かう。その途中にある電柱を見学して。

電柱でござる(お約束)。なんの電柱かというと、これが日本最古のコンクリート電柱なのだ。現地に「函館市」名で書かれている解説は以下のとおり。
日本最古のコンクリート電柱
この電柱は、大正12年(1923年)10月、当時の函館水電会社現北海道電力)が建てたもので、現存するコンクリート電柱では日本最古のものである。
高さ10メートルのこの電柱は、現場打ち工法で、底辺が47センチメートル四方、上辺が19.5センチメートル四方の鉄筋コンクリート造りで角錐形という珍しいものである。
火災が頻繁に発生した当時の函館では、この頃から耐火建築が増えはじめたが、この電柱もそのあらわれである。
後に、同形の電柱が建物をはさんで建てられたため、「夫婦電柱」と呼ばれて市民の話題となった。木柱が普通であった当時から今日まで、耐用年数を越えてもなお現役として街の移り変わりを見守っている。
モニュメント的に保存されているのかと思いきや、ごらんのとおり普通に電線が張られた現役の電柱で、気づかずに通り過ぎてしまえそうなほどに地味。

とはいえ、円柱ではなく四角柱、それも上に向かって絞り込まれていく錘形状の電柱ということで、なかなかに特徴的。古い電柱というと、装飾過剰な円柱をイメージしていた反動もあって、このシンプルでクリーンな合理性を感じさせる電柱には好感が持てた。
……ていうか、自室の書棚に『ニッポン最古巡礼』(新潮新書)が並んでいるから、そこでこの電柱についても既に読んでいるはずなのだが、いや全く忘れてしまっていた。大丈夫か私。

煉瓦街はマァ、横浜のそれと同様の商業施設です。
ここから函館駅まで歩いて、この日の観光はおしまい。函館の街、丸一日かけて存分に見物でき、満足のいく充実した旅行となったものの、青函連絡船洞爺丸や函館山ロープウェイなど、今回だけはまだ見尽くしたとは言い難い。機会があれば、いずれまた訪ねてみよう。

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