先日、『昭和30年代 モダン観光旅行』(講談社)という本を購入した。「絵はがきで見る風景・交通・スピードの文化」との副題どおりの本で、パラパラとめくるぶんにはそれなりに面白い一冊だ。
ただ、「あとがき」で「当初はグラフィックだけの本の企画だったが、昭和30年代に関する書物の多くが、ただ事象の羅列や懐古だったりで、文化史として批評性をもって語られていないことから、テキストを加えることにした」とのたまわっているのには少々カチンときた。
そんなご大層なことを言うくせに、文化史を語る上での出発点、イロハのイとなる
「その絵はがきが刷られたのはいつ頃か(撮影されたのはいつ頃か)」が全く書かれいないとはどういうことだ?
車が写っている写真なら、旧車に詳しい人を一人でもアドバイザーに呼べば何年かほぼ特定できるし、もうちょい手間をかけるなら、各地の郷土史研究家に助力を仰いで、建築その他から目星がつくだろう。
そうした基本中の基本をサボっておいて、「ブンカシとしてのヒヒョーセイをもって騙る」とは、いやまったく、グラフィック・デザイナーとはお偉いものだ。
いや、そんなイヤミを書くために取り上げたわけではない。

この本の中に一葉、この画像の「函館市地域交流まちづくりセンター」が今井百貨店函館支店だった頃を捉えた絵はがきが掲載されているのである。入り口には赤地に白文字で「○○記念謝恩大売出し」の横断幕が掲げられていたりで、なんというか「現役」を感じさせてくれる。そして、全体形状やディテールが、今とはけっこう違っているのだ。
函館で購入した『函館の建築探訪』(北海道新聞社)によると、「平成19(2007)年に再生されている」とのことで、現在の姿はそれ以後のものなのだろう。昭和4年に増築されたという4階部分が現在はなくなっており、代わりに正面玄関上のドームが復元されている。
『モダン観光旅行』、『函館の建築探訪』、そして現在の写真を見比べると、「昭和4年の増築後(1960年代撮影か)」〜「装飾の簡略化後(1990年代末撮影)」〜「増築前の姿への復元後(2009年撮影)」の変化が一目でわかって興味深い。

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