中略〜
跳躍した。ひとりを斬り落とした。地に降り立った時、矢の突き立った方の膝が、折れた。槍。背中。わかっていたが、膝を立てる間だけ、動きが遅れた。背中を、槍が貫いてくる。躰を捻り、剣を撥あげ、槍を持っていた兵を斬り落とした。脇腹に、槍が来た。左手で掴み、右手の剣で柄を両断すると、引き抜いて捨てた。
俺はまだ立っている。雷横(らいおう)は、そう思った。突っこんでくる馬が、二つに見え、三つになり、ひとつになった。躰が、自然に動いていた。なにもしないのに、頭蓋が割れた兵が目の前に落ちてきた、と思った。六、七騎が前へ出てきたが、突っこんではこなかった。一斉に、槍を投げてくる。一本が、腹に突きたった。
俺は、まだ立っている。雷横は思った。男は、決して倒れたりはしないのだ。
また、槍が投げられてきた。どこに突き立ったかのか、よくわからなかった。
視界が明るかった。空なのだ、と雷横は思った。ということは、もしかすると自分は倒れているのか。立とうとした。視界が暗くなり、また元に戻った。馬の腹が、視界を通り過ぎていった。
音など、なにも聞こえない。雷横は、空を見続けていた。愉しかったな。ただ、そう思った。
また視界が暗くなった。
(水滸伝 七/烈火の章/地理の星から抜粋)
いゃあ〜文章の力って凄いすよね!?(…俺だけか?)初めて読んだ時、背筋ゾワゾワして鼻の上がツーンとして…ヤベェ〜って心の中で何度もつぶやいてました。
これから死んでいくのに「愉しかったな。」…すよ?!
か、か…かっこい〜!
俺もそんなライブ(人生)がしたい。

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