いつものように風呂場の扉を開けて中に入る。
足下に黒い点が蠢いている。
見上げた先の天井のライトや壁にも無数の黒点。
…大群である。
戦である。しかも深夜の。
羽根蟻ごときに男は怯んだりしないものだ。
しかし俺は文字通り裸一貫である。とりあえずパンツと言う名の鎧を再び付ける事した。
戦いの火蓋が切って落とされた。
指先と言う名の槍がうなりをあげる。瞬時に三匹を潰す。左の壁。五匹を押し潰した。頭上から二匹が襲いかかる。左手で払いのける。知らぬ間に肩に一匹。今度は掌という斧で叩き殺した。しかし次々と襲いかかる空中からの攻撃に防戦一方である。
どう見ても数が多過ぎるのだ。
孤軍奮闘である。
…ランボーは1対1500人…
ここにはざっと見渡して数百匹はいようか。
群れてしか攻撃出来ない輩に負けるわけにはいかないのだ。
俺はまだ立っている。男は倒れたりしないものだ。
頭上では嘲笑うかのように飛び交う蟻軍。
諦めかけたその時…閃いた。
そういえば科学兵器があった事を思い出した俺はすぐさま玄関にむかいソレを手にとった。
「ゴキジェット」
…きっと蟻にも効くだろう。
そう確信した俺は風呂場にとって返し、群れの中心目掛けて引き金を弾いた。
一瞬で勝負は着いた。
足下に拡がる無数の屍。
蟻軍は三回噴射した時点でほぼ壊滅状態となった。
城の上に「河」の旗が高く掲げられた。
歓声が響く。
戦に勝利した俺は、ホッと胸をなで下ろしシャワーで屍を流しながら、頭を洗っていると気が付いた。
鼻の通りが急によくなったのだ。しばらくすると鼻の穴がヒリつく感じがしはじめた。さらに時間が立つと舌の先が軽くシビれたようになり、ちょっと頭も痛くなりはじめた。
軽度の中毒状態である。
そりゃそうだ!
密室で毒ガス噴霧である。アレだけの殺傷力があるのだから人の身体に害が無いわけが無い。
危うく全裸で倒れるトコでした(苦笑)。
いや〜ゴキジェット恐るべし!!
みなさんも密室でのスプレー噴射には気をつけましょう。
必ず窓を開けるなどの換気をしましょう。
では
朝、目覚められる事を祈って…。

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