2015/8/25

のらくろ雑考  
 思い出話。

 私が小学校5年か6年位の事だったと思うのだけど、ある日ふと父が漫画「のらくろ」の復刻文庫版を買ってきてくれました。
 どのへんの時代かというと、世間でキャンディキャンディが流行っていた頃だったかなと。(読んでいないから詳しくは知らないけど、読んでない人でも流行っているのが判るくらいの大人気)

 戦中漫画ののらくろは、もっとずっと幼い頃白黒テレビの画面で資料っぽい放送を見たような見ないようなという超おぼろな記憶なんだけど、でも大雑把に黒い犬の軍隊ものだったって事くらいは知っていました。
(説明。田河水泡の漫画。主人公ののらくろ(犬)が猛犬連隊ちう軍隊に入って、島耕作のように出世していく漫画。戦前の漫画の黎明期に大人気を博したけど、人気の源コメディ色が軍部ににらまれて打ち切られた…とくだんの本の解説にありました説明終わり。)

 本が3巻だったのか5巻だったのかも覚えていないんだけど、全体にコミカルな話が多かったのらくろの中で、一部やけにシリアスな話があったのだ。
 戦闘がこう着状態になったとき、敵の防衛線を突破するために、3人の兵士(犬、名前はなかったような気がする一発キャラ)が爆弾しょって突撃して自爆してしまう、戦闘には勝ったけど最後のページでのらくろが兵士(犬)のお墓の前でしくしく泣いている話。
 よもやのらくろでそんな深刻な展開になるとは思ってもいなかったので、衝撃が大きかったのだ。でもって小学生の私は大変感動して、のらくろ=コメディじゃなくなってしまったのね。
 全体が可愛く楽しく少々間抜けな物語の中に突如挿入される深刻な人生ドラマ。インパクト絶大でした。

 大人になってから、このエピソードが実際の戦争であったことだったとドキュ番で知りました。それも自爆した兵士は自爆するつもりはぜんぜんなくて、爆弾を設置する任務についていたはずなのが、戻れなくて巻き込まれて亡くなってしまった、だけどそれがニュースになった時には命をなげうって自爆してくれたという話になってしまってた、という件。
 おそらくそうであって欲しいという、受け取る側の希望(それもわりかし大人数の)が事実をねじ曲げてしまったんだろうな、感動した小学生の私みたいなのが。

 認めたくない不慮の死を受け入れるよりも、美しい話や萌える話を人はついつい信じてしまうよね。でも亡くなってしまった当事者にとっては、本来許し難い不手際だったりミステイクだったりする訳だから、外野までもがそれを隠蔽するのに加担しちゃいかんのに。
 それに、この現実の人の死よりも美談を壊さない事を優先させた空気が、その後の特攻を許容する空気の素地になっているよね多分。

 私はおたくなので、萌えも感動も大好きだ!
 だけど、おたくのはばかりの底にはたぶんのらくろがいます。私にとっては大事なブレーキなんだと思います。
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