2006/10/3

東か西か  
 米沢氏の訃報を今日になって知りました。心からご冥福をお祈りします。

 京極本の前に、一ヶ月以上寝る前に読んでいたアミーノ氏の本読了。「東と西の語る日本の歴史」(講談社学術文庫)。榛名のおとんの本棚から借りてきたのですが、大変感銘をうけました。
 感想というか覚え書きを書いたら、だらだら長くなったので以下。


 わたしはおおむね関東育ちの人間なので、関西人と文化習慣の違いを聞いたり話したりするのが、わりかし新鮮で楽しいです。
 そんな超浅い視点の私が、読み終えるまでに各章5回は読み返しては頭をかかえた、網野善彦氏の名著でした。

 以前読んだ「日本社会の歴史」という本では、現在日本列島と呼ばれている地域が、どの時代にどのあたりから「日本」になっていったのかがメインでしたが、今回の本では天皇を中心にした西国の王朝と、それに対抗する東国国家の対比を軸にまとめてありました。

 というか、ずばりメインは東国の歴史の流れなのかな。西国(大和朝廷から始まる王朝国家)の歴史は、一般に「日本の歴史」として通っているから。
 その王朝に対抗して生まれた東国の勢力(将門の乱、源氏の登場、北条政権の成立、足利と関東公方の活動、後北条氏を経て徳川東国政権誕生に至るまで)が、ローカルな単発事件なのでなく一貫した流れとしてとらえてあるのよ。
 個人的に特筆テーマ。西の海賊と東の弓射騎兵、ムラ(西)とイエ(東)、非差別民と性差別、年号の使い分け、西国−東北と東国−九州のタッグなど。

 そういえば中学の頃、平家物語を読んで「なんで源氏方には茨城とか栃木の人たちがまじってるんだろう」と不思議がったり、封殺鬼始めて平将門を調べた時に「坂東は交通に不便なとこじゃなかったんだろか」とか、どうにも気になった初歩謎が、つるつる解けて嬉しかったです。
 ちなみに東と西の構造線は、北が新潟・富山の県境、南は静岡・愛知の県境で、これは小学校の頃に習ったぞ、地理で。フォッサマグナというやつだな(不思議だな)。
 なにしろ比較・相違は石器時代から始まっているんだけど、通して読んでしみじみ思った。東と西の違いは想像よりも遥かに大きい。現代では言葉が通じているから、大雑把に判った気でいられるけれど、会話の文脈や反応で理解の空白になっている部分は、少なからずあるんだな。
 私は違っている事はいい事だと思う方だけど、何故違うのか、どう違うのかを理解できないのはいい事じゃない、と思うので、こんなふうに見えなかった部分を照らしてくれる本にはひたすら感謝。

 本文の最後で、先生「歴史学において「もしも」という事は本来許されないが」と前置きしつつ
「もしも北海道・沿海州に強力な勢力があったら、かつてのモンゴルのような勢力が、西日本の一部を押さえていたなら、東国と西国が分裂し、別個の民族となり、国家となった可能性も大いにありうると思う。
 オランダとドイツ、ノルウェーとスウェーデンなどの違いの幅と、東日本と西日本、西日本と朝鮮半島との幅と果たしてどのくらい違うのであろうか。

 −またもしも、戦後、日本列島が分割され、東日本と西日本が別個の国の占領下に入っていたら、恐らくはかなり性格を異にする国家が成立していたことは確実であろう。
 朝鮮半島でおこっている事態は決して対岸の火事ではない。
 もちろん、朝鮮の場合と同様に、日本列島においても、統一を回復するための必死の努力と運動がおこったに違いない。
 しかしそのときに、おそらくまず間違いなしに多くの血を流して、あらためてみずからのものとした日本人像、日本民族の意識は、現在のような、ぼんやりとした薄っぺらなものとははるかに違ったものになっているに相違ない、と私は思う。
 少なくとも次代の世代を育てる教科書の中で、天皇の死を「没」にかえてみたり、中国や朝鮮に対する侵略を「進入」としたり、朝鮮人民の蜂起を「暴動」といいかえ、中国人・朝鮮人、さらには沖縄人に対する虐殺を隠蔽するような恥知らずなことは絶対起こり得なかったであろう。」

「日本の現在の平和は幸せなことである。だが、幸せに慣れ、みずからの本質とその世界のなかでの位置づけを本当に正確に認識するための、たゆまぬ真剣な努力を怠るならば、幸せは転じ滅亡の道につながるであろう。」
 ほんの1、2年前に、学ぶこと、認識することを「歴史家の仕事」と言い切って拒否した人(というか最早風潮)を彷彿せずにはおれない締めでした。もう20年以上前の文章なのですが。
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