プロヴァンスの三姉妹の中でも、その構造の特殊性から建築関係者の間で人気が高いル=トロネ修道院に行ってみた。

<ル=トロネ修道院の外門>
12世紀当時のシトー会修道院は、好んで人里離れた所を選んで建てられているのでどこもそうなのだが、特にここはわかりにくい。外壁を含む院すべてが深い森の中の窪地にあって(これが建築上の面白さの由縁でもあるのだが)付属の駐車場からすらもその姿が見えないのだ。半信半疑で案内板に従い森の小道を下っていくと、上掲写真のような外門が、木々の隙間から徐々に姿を現してくる。

<ル=トロネ修道院>
入場料を払って門を通ってもすぐには修道院は見えてこない。が、ゆるい上り斜面に設けられた庭園を潜り抜けると、よくもこんなものがこの森に隠れていたものよ、と驚嘆させられる優美な伽藍が屹立している。
シルヴァカンヌ同様、当院もフランス革命時に修道会自身からは一旦手放されているのだが、シルヴァカンヌに先んじること約百年、1854年には国が所有権を取得し、辺鄙な立地もあって略奪などによる荒廃を免れることがかなったようである。おかけで今日の我々が、ほぼ往時そのままの姿のル=トロネ修道院を楽しめるワケで、当時の政府関係者の先見の明に謝意を捧げずにはおれぬ。