去年の
MSXdev から“フリースタイル部門”が新設されたにもかかわらず、その真価を活かした作品は登場せず、結果ボク如きが部門賞を獲ってしまったのは
繰り返し述べてきた通り であるが、先週末、ついにV9990対応の作品がMSXdev'18に投じられた。
<Dream Puzzle by Mapax>
まず、V9990って何やねん、という話からしないとわからない人には何の話かわからなくなると思うのだが……いや、それがわかってもやはりわからない話のような気がしないでもないが……V9990はYAMAHA製のVDPの名前で、事の真偽はともかくとして幻となった“MSX3”用のVDPとして開発されていたとされる(厳密にいえば、その幻のVDPの系譜に連なる)チップである。MSX2+まで上位互換性を維持していたTMS9918、V9938/58とは仕様が断絶していて、当時の市場に出回っていたモノから性能的に近いのを探すと、セガ・メガドライブに採用されていた同じくYAMAHA製のVDP 315-5313がある。
MSXの商業展開が終了した直後といっても過言でない1994年、このV9990を従来のMSXにカートリッジとして接続する製品を、スイスのグループが開発し頒布し始めた。この仕様がMSXでV9990を利用する際のディファクトスタンダードとなり、元来のMSXのポリシーに従ってこれをほぼフルコントロールするBASIC言語も後に提供されるようになった。
厳密に言えば、これはMSX規格をベースにした逸脱の一種に過ぎないのだが、どの程度の数が出回ったのか定かでないものの、欧州ではそれなりの「標準」的な地位を得たようで、対応するゲームソフト……MSX用だが旧来のMSXのみでは動作しないことになる……も少なからずリリースされている。
スペインの Kai Magazine が特にこの分野ではその活躍がよく知られている。以下に例示するMSX+V9990環境用のゲーム動画を見れば、同VDPがメガドライブのそれに近いことが実感できるのではないだろうか。
VIDEO
<Life on Earth for V9990+MSX, Kai Magazine>
国内に目を向けると、MSXdevにおける愛すべきライバルの一人であるN.I(bixmatan)氏が昨年来精力的にその描画性能と氏独特のセンスを見せつけてあまりあるデモを公開している。実行バイナリは
氏のサイト でダウンロードできるが、動作させるにはMSXturboR実機+GFX9000カートリッジが必要だ。
VIDEO
<V9990 curry demo by bixmatan>