近三作は、特にそれにこだわっていたワケでもないが、いずれも横スクロールシューティングだった。今回は……ここまでにチラ見せしていたグラフィックから既に気づいていた人もいるだろうが……画面奥に向かって進んでいくレイルシューターを作っている。
奥に進むのみならず、同時に左右にも画面が流れるので、MSXの描画能力について詳しい人から見ればインパクトがあるかも知れないが、そんなに大したことをしているワケではない。要するにこれは単なるパラパラ漫画であり、その切り替えに繰り返し述べてきたVRAMのベースアドレス変更を使っている。
やや特殊な点……これとて過去に前例がないワケではないと思うが……を挙げるとすれば、奥方向と横方向で、実はスクロールさせている原理が異なっている。直感的にわかりやすい横方向から先に触れると、これは単純に絵柄(パターンジェネレータテーブル)のパラパラ漫画になっている。対して奥方向の流れは色(カラーテーブル)でまかなわれている。
絵柄のデータの1コマを抜き出して色情報を取り除くと、実は上に示したような縦縞模様になっている。ここではビットが立っているピクセルを白、そうでないピクセルを黒で表示しているが、VDP9938 の GRAPHIC 3(SCREEN 4)では、この絵柄に対して、横8×縦1ピクセル毎にビットの立っているところと立っていないところに色を与えることができる。この色情報が絵柄とは独立した縦方向の縞模様になっていて、これが絵柄の縦縞を交わることで情景動画に見える市松模様を生み出している、という次第だ。

<奥方向は上掲色パターンの遷移でスクロールする>
説明するまでもないとは思うが、地面の色情報については、横8×縦1ピクセルに対応する1バイトに色情報のうち、上位4ビットが絵柄でビットが立っているピクセル、下位4ビットが立っていないピクセルのカラーコードに対応している。上掲色パターン左において、暗い緑の行については下位4ビットがそれで上位4ビットが明るい緑になっていて、明るい緑の行はその逆になる。この色情報を前掲の縦縞模様に上被せすると、上掲動画に示したような市松模様が浮かび上がるというワケ。
これが技術的に簡単に実現できることは・・・・・・下拵えが面倒臭いことはともかくとして・・・・・・わかっていて着手したことだから、何も問題はなかったのだが、それでも実際にやってみないとわからないこともあって、VRAM総容量との兼ね合いから、絵柄12パターン、色4パターンが使えるのだが、最初に試作時点では12パターンの絵柄を通常用4種、左右の高速移動用(上掲の縦縞が反った柄)に各4種としていた。ところが、いざこれを動かしてみると縦横ともに4パターンのアニメーションとなることから、縞の遷移が見事に同期してしまって、前後左右どちらに進んでいるようにも見える摩訶不思議なモザイク模様が現出してしまった。
それぞれの速度を調整してみたりしたのだが、パターン周期一致による同期はこれでは如何ともし難いようで、やむなく、ROMイメージのページ0に圧縮収蔵済みだったこの全パターンを作り直す羽目になった。結果、配分は通常用8種、左右高速移動に各2種となった。今度は高速移動分2種がそれっぽく見えなくなるのではないか、との危惧があったのだが、これは案ずるより何とやらで、少なくともボク自身は満足のいく感じ。最終的にはこの背景の上でキャラクタが背景の流れに応じて挙動するので、このパターンの少なさはより気にならなくなる計算である。
ちなみに。
単純に考えると、『スペースハリアー』(セガ・1985年)だとか、MSXで言えば『フィードバック』(テクノソフト・1988年)のようなゲームになることが想定されると思うが、実はちょっと違う。まぁ、それについては追々。