電子レンジ、たまご、と言うともう爆発しか思い浮かばないのであるが、我が家ではゆでたまごが電子レンジで供されるようになって久しい。
知っていた人からすれば何を今更、かな話とは思うが、いろいろとニッチでユニークな調理器具を扱っている
曙産業というメーカーがあって、ここの“レンジでらくチン!ゆでたまご”あるいは“ezeggレンジでゆでたまご”という製品を使うと、その名の通り電子レンジで簡単にゆでたまごを作ることができる。
で、今日妻と散歩しながら議論になったのだが、“ゆでたまご”という料理名は文字通り“茹でた卵”を言っているのであり、調理法+素材による命名であることは明白である。そして“茹でる”とは一般的には
食品を沸騰させた水(湯)の中で加熱する調理法(
Wikipedia)である。然るに、上掲動画……前半は本題とは無関係なので
1分20秒目から見てほしい……を見ればわかるように、レンジでらくチン!ゆでたまごにおいては、卵は水の中に浸っていない。つまり、茹でているワケではないのであるから、これを“ゆでたまご”と呼ぶのは誤りであり、正しくは、ゆでたまごっぽい何か、なのである。
では、このゆでたまごっぽい何かは、正しくはどう呼ばれるべきなのか?
調理法+素材、という命名原理に従えば、“たまご”の頭に電子レンジ調理を意味する和語を冠すればよいことになる。妻はノータイムで「じゃぁ、チンたま」とミもフタもない結論に飛びついたのだが、それはそれで正鵠を射ている気がしないでもないが、平仄を考えると何某かの和語を割り当てたいところである。しかしながら、困ったことに電子レンジ調理を意味する和語がみつからない。
そこで逆から考えてみることにした。英語でもゆでたまごは“boiled egg”つまり「茹でた卵」と呼ばれるが、同じ発想で電子レンジで供されるところの like a boiled egg を指す語は何になるだろうか、と。するとどうもコレは“zapped egg”ということになる。
zapは本来は動詞としては急激であったり衝撃的な動作全般を指すそれになるが、漫画等で魔法を使う様も指すことがあり、そこから転じてこの意味としても用いられるようである。もっとも、これは俗語的な用法であるからして、今求めているところの英語よりはむしろ妻の言うところの「チンたま」の英訳語に近い。
もう少し筋目正しい言い回しを求めると、当然のことながらコレは“microwaved egg”ということになる。考えるまでもないことだが、近代以降に生まれた概念に古風な動詞が存在しようはずもなく、マイクロウェーブで調理するのだから動詞としてもmicrowaveだというのは極自然な語の成り立ちである。
ここで本題に戻って日本語について考えると、電子レンジによる調理行為は、筋目正しくは、英語同様に“マイクロ波加熱する”と呼ぶのが正しいようだ。さすれば、レンジでらくチン!ゆでたまごによって供されるところのゆでたまごっぽいたまごは“マイクロ波加熱したまご”と呼ぶのが正しい。したがって件の商品名も筋目正しくは“レンジでらくチン!マイクロ波加熱したまご”であるべきだ。