去る10月30日、31日の2日間、東京国際フォーラムで、
今年で4回目の開催となるアドテック東京が開催された。
私もいくつかのセッションに参加したのだが、
その中からFacebook Inc. Director of Global Creative Solutionsの
Mark D’Arcy氏によるオープニング・ジェネラル・セッション
「Creativity in a Connected World」の概要を私自身の感想を交えてまとめてみた。
D'Arcy氏はセッションの冒頭、長めの自己紹介を終えると、
いきなり“FACEBOOK IS OLD(Facebookは古臭い)”という、
かなりエキセントリックなスライドを投影した。
いったい何がはじまるのだろうと、あれこれ想像力を働かせていると、
Facebookは、「いいね!」やコメントなどのリアルな行動を通じて、
世界各国の10億人とつながることができる点が画期的なのであり、
コミュニケーションに携わる人々は変化を追いかけるだけではなく、
人間の中の変化しない部分を見据えるべきである。
つまり、企業はFacebookを活用することで、
地域の商店のようにパーソナルに人々とつながり、
ビジネスを成長させることができると語ったのだ。
そのプレゼンテーションの構成には度肝を抜かれたものの、
私の想像は大枠では当たっていた。
そしてD'Arcy氏は、コミュニケーションのシフトとして、以下の3点を提示した。
@Disruption(分裂)からConnection(つながり)へ
ASearch(検索)からDiscovery(発見)へ
BHeavy Weight(重さ)からLight Weight(軽さ)へ
@はFacebook自体がその象徴。
Aでは、ビッグデータの時代にあって、
人々は相互につながりあった友人たちの知識に頼るようになっていると指摘。
Bでは、人々が多忙を極める中で、
受け手にとって価値のある情報を提供することで、
いかにシンプルにブランド・エンゲージメントを高められるかが重要として、
“Return on Attention”というキーワードを提示した。
続いて、今回のセッションの核となる部分に突入。
Facebookを効果的に活用するためには、目的を踏まえると同時に、
クリエイティビティを発揮することが重要であるとして、
以下の6点を提示し、それぞれの事例を紹介した。
@Be Authentic(真摯に)
ABe Useful(受け手の役に立つ)
BBe Entertaining(楽しく)
CBe Relevant(適切に)
DBe Timely(適時に)
EListen(なぜ人々が行動したのかを考え、きちんとアクションを取る)
この中で最も私の印象に残ったのは、Relevantという言葉。
これはもうかれこれ5年以上前に、ダイレクトマーケティングの父の異名をもつ、
レスター・ワンダーマン氏の口から初めて聞いた言葉だ。
そう思って改めて上記の6点を見直してみると、
これらは「ダイレクトマーケティングの留意点」と言い換えても
通用するのではないかと思う。
ダイレクトマーケティングが日本に紹介された30余年前と比べると、
企業と顧客とのコミュニケーションの環境は大きく変化した。
インターネットやITが進展したことで、
インタラクティブでスピーディな情報の受発信や、
大量の顧客データの分析結果に基づく
精緻なキャンペーン展開が可能になったのだ。
しかし、コミュニケーションの本質は何も変わっておらず、
Be Authentic、Listenに象徴される、
企業がどこまで真摯に顧客と対峙できるかという課題は依然として残されている。
そう、“FACEBOOK IS OLD”なのだ。
そしてFacebookを含むソーシャルメディアが普及すればするほど、
企業はこの古くて新しい課題をシビアに突きつけられることになる。
炎上問題もそうだが、もはや情報の主導権が顧客に委ねられているからだ。
こうした中、顧客満足&従業員満足の向上を実現するべく、
戦略的企業文化の構築をはじめとする、
さまざまな挑戦がなされているのが現状と言えるだろう。
D'Arcy氏は講演の最後を、ブランド力に優れ、
ブランドへのエンゲージメントのレベルが高く、
またモバイル領域のリーダーでもある日本の企業は、
Facebookを活用することで、島国でありながらも、
世界10億人のユーザーとの架け橋を築くことができるとして締めくくった。
私自身、日常の中では日本が島国だということをほとんど意識しないし、
そもそも日本語というユニークな言語に頼っているだけに、
島国だからソーシャルメディアの活用が有効とはあまり思ったことはないが、
その辺りの感覚は、日本の中から見るか、外から見るかで、
大きく異なっているのだろうと感じさせられた。
私自身、Facebook社の講演を聴いたのははじめてだが、
期待通りの内容だったと言えるだろう。

※写真は同イベントの他の講師の講演風景。
D'Arcy氏の講演はあまりに混雑していて、撮影がままならなかった