2017/8/31  23:43 | 投稿者: 時鳥

ぽちる、という単語が視界の端をかすめた。
対義語は「たまる」かしらねえ。
一瞬、そんなことを考える。

「いぬります」と、四国出身の知人はかつて宣言した。
最初に耳にした時、頭の中を犬が走って行った。
帰ると言う意味だそうだ。
今ではこの言葉を耳にしても犬は走らなくなったが、
時々、猫が寝込んでいる様子をぼんやりと連想することがある。
3

2017/8/28  22:59 | 投稿者: 時鳥

朝倉彫塑館の企画展のチラシを入手する。
タイトルは「猫百態」。同館所蔵の全猫作品を展示するそうだ。

1964年の東京オリンピックに向けて、朝倉文夫は「猫百態」展を企画し制作に没頭していたが、急性骨髄性白血病を発症してオリンピックの半年前に亡くなった。

と、チラシにあった。
何度読み返しても、オリンピックと猫の関係がわからない。
そこ、関係なくないですか?
とどのつまりは猫が作りたかったんだろうなあ。

朝倉文夫の猫は、可愛いところももちろんあるけれど、それ以上に生々しくて猛々しい。
うっかりちょっかいをかけようものなら、邪魔するんじゃない、と怒られそうな迫力の猫が何匹もいる。
理由はともかく、全猫がいるなら見に行きたい。
こちらだってとどのつまりは、猫が見たいのだ。

「猫百態」
朝倉彫塑館(日暮里)
期:9/2〜12/24 9時半〜16時半(月木休み)500円

3

2017/8/27  22:18 | 投稿者: 時鳥

百年に一度だけ水面に浮上する盲目の亀が、水に浮かぶ木の穴に潜り込む確率。
涅槃経に見える比喩で、仏法にめぐり合うことの難しさを言っているのだそうだ。

仏法はともかく、確率としては、まれにまれにこんなことって起こっていると思う。
故事ことわざ辞典をめくっていたら、近くにこんなことわざが載っていた。
「山の芋鰻になる」。世の中は突拍子のない変化が起こるものだ、というたとえ。
個人的には、こちらの方が性に合う。
盲目の亀よりよっぽど有り得ない現象なのに、断言している。
山の芋に見えるのは、先入観かもしれない。
絶対に有り得ないとか、最初っから決め付けちゃいけない。
まさかってことが、世の中では結構頻繁に起きている。
2

2017/8/24  6:58 | 投稿者: 時鳥

1秒間に伸びる髭の長さを表す単位だそうだ。
時間ではなく、長さ。
毎日毎日、律儀に一定の長さに伸びる髭を、
毎日毎日、律儀に剃り続けている人が思いついた単位だろう。
剃っても剃っても翌朝には生えてきて、面倒なことこの上ないが、
伸ばそうと決めると全然伸びない、もどかしくも悩ましい存在。
1

2017/8/22  22:14 | 投稿者: 時鳥

『はかりきれない 世界の単位』という本を読んでいる。
世界中の不思議な単位が載っている。

「ブーク」はシベリアの原住民たちが使っていた単位で、
トナカイの角が見分けられる距離のことだそうだ。
角の枝まで見えたら1ブーク。
目が悪くなると1ブークは近くなる。
あるいは老眼で遠くが見えるようになると、1ブークは遠くなる。

年をとったり境遇が変わったりすると、近くなったり遠くなったりする距離と言うのは確かに存在する。
トナカイの角だけに限られた話ではない。
2

2017/8/20  23:27 | 投稿者: 時鳥

「たそがれの女心」というベル・エポックのパリ社交界を舞台にした映画を観る。
上流階級の紳士淑女は優雅に嘘をつき、火遊びをし、悪びれることなく騙す。
彼らの生活は何もかもがまるで遊戯のように見える。
軽やかで真剣さにも真実味にも欠ける。
女主人公は浪費の借金を埋め合わせるために、結婚記念のイヤリングを軽い気持ちで売る。
そのイヤリングは関係者の間を踊るように巡って、それぞれの心に波紋を投げかける。
ひとつやふたつのひびでは、物事は壊れない。響きが鈍くなって、ちょっとおかしいな、と感じるのが最初だ。
亀裂が拡がって、別の方向からもひびが入って、ほんのちょっとだけ無理な力が加わる。
その瞬間、いとも簡単にすべてが崩壊する。
引き返せないポイントに目印はなく、気付いた時はいつだって遅すぎる。
遊戯だったはずが、いつの間にか遊戯ではなくなっていた。
由緒ある美しい磁器に小さなひびが入って、あっという間に崩れていくような物語。
2

2017/8/18  7:18 | 投稿者: 時鳥

平日夜の催しに出かける。
アンケートが配布された。
参加しやすい時間帯についての問いがある。
平日夜なら参加できるからここにいて、質問に答えているのだけど。
平日の昼しか参加できない人は、そもそもこのアンケートに答えられない。
平日夜でも参加できるけれど他の時間帯の方が都合が良い、と言う人の意見までしかこのアンケートでは拾えない。

参加しなかった人に対するアンケートっていうのがあってもいいんじゃないだろうか。
ほとんど答える人はいないだろうけれど、逆に言えば、よほど言いたいことのある人だけが回答する。
配られたからなんとなく丸をつけました、意見欄は空欄です、みたいなアンケートを10枚集めるより、よほど意味のある、熱量の高い回答が寄せられそうだ。
2

2017/8/17  7:28 | 投稿者: 時鳥

『人月の神話』という本を読む。
人月は、にんげつ、と読む。
作業量を見積もる時に、一人でひと月かかるなら1人月、一日かかるなら1人日と見積もる。
一種の単位だが、人と月が掛け算で計算できるように見えるのが曲者だ。
4人月の作業を4人でやったら1ヶ月で終わりそうに見えるが、実際にはそんなことは滅多になくて、個人的な感覚では4人なら2ヶ月はかかる。
作業には順序があって、同時進行できないことが多い。また、人が増えればそれだけコミュニケーションのコストがかかる。
それを無視して、人と月が交換可能であるかのように思わせる「人月」は、「間違った危険な神話」だと著者は言う。

ブルックスの法則
「遅れているソフトウェアプロジェクトへの要員追加は、さらにプロジェクトを遅らせるだけだ」

人月の神話も、ブルックスの法則も、あまりにも的を射ていて、苦笑する。
笑った後にがっくりとするのは、これが1970年代に書かれた本だと言うことだ。
40年経っても、状況はほとんど変わっていない。
技術の問題ではなく、人間の問題なのだ。

プロジェクトが遅れたとなれば何か解決策を模索しなければならない。要員追加は部外者にもわかりやすい解決策だから、それが解決にならないかもしれなくてもついつい手を出してしまう。
どうしてプロジェクトが遅れたかと言えば、それは見積もるときに楽観的であったり、上司や顧客の圧力に負けたり、また作業中に病気やミスで一日ずつ地道に遅れて行ったりするためである。
つまりは、人間らしい理由で遅れて、人間らしい埋め合わせ方をする。
技術は変わっても、人間の考え方や振る舞いなんかはそんなに変わらない。
だから何十年たっても同じことが起きる。
3

2017/8/14  23:41 | 投稿者: 時鳥

渋谷のBunkamura Galleryで富田菜摘さんの個展を見る。
立体作品を作る作家さんで、材料は廃材、作るものはいつも動物。
今回は、楽器の廃材を使った新作を中心にした個展だった。
バイオリンやビオラが胴体になったウサギ、マンドリンがお尻のふくらみにもなっているタヌキ、口の中が鍵盤になったワニ、亀の子だわしが尻尾になった熊、傘の骨や布をつかったコウモリなぞがそこかしこにたむろしている。
誰も彼も、とても機嫌の良い顔をしている。
最終日だったので、プレートの多くには売約済みの赤ピンが立っていた。
こういうご機嫌な子達を身近に置きたい人はやっぱりそれなりにいるらしい。
ゴミだったものがご機嫌な動物になって、望まれて迎えられる。
そーか、そーか、幸せにおなりよ。
子供時代から知っている近所の子が結婚するみたいな気分で心の声を送る。
触ってよければ、頭をなでてるところだ。
2

2017/8/11  22:02 | 投稿者: 時鳥

外出先でトイレに入る。
ペーパーホルダーに「Quintette」と書かれているのに気付く。
予備のトイレットペーパーが4巻格納できるタイプのペーパーホルダーだった。
だから五重奏で五人組なのだ。
これなら、頻繁にペーパー補充に来なくても紙切れが起きない。

2巻格納できるタイプはよく見かけるけど、4巻はあまり見ない気がする。
いったい、上限は何巻くらいなのだろう。
ペーパーホルダーを延ばせば何巻でも格納できるけれど、清掃員の手が届く高さに収めなければならないし、延ばせば途中で故障する可能性がそれだけ高くなる。紙詰まりが起きた時に取り除けないと大変だから、腕を差し込んで届かないほど長くも出来ない。
とすると6巻くらいかなあ。

天井から水道管みたいなのを下ろして、足りなくなったら補給センターから自動的に補充されるようにしても面白いと思う。
管の中をトイレットペーパーがごろごろと転がっていく。
ふと気付いたのだけど、レバーを押し下げると新しい巻が降りてくる、今のペーパーホルダーって、作りとしては缶飲料の自動販売機とよく似ている。
3

2017/8/8  21:53 | 投稿者: 時鳥

パンくずリスト、と呼ばれるものがある。
WEBページの先頭に「TOP→最新記事一覧→2017年8月5日の記事」みたいな感じでついている。
深い階層まで潜ってサイト内をさまよっている時でも、これがあれば大通りや入り口までスムーズに戻れる。
サイト内迷子の道案内をしてくれる、ありがたい存在だ。
名前の由来は間違いなく「ヘンゼルとグレーテル」だけど、でもあの子達って、パンくずを撒いたがために帰れなくなった子達ではなかったか。
小鳥さんに食べられないようにするなら白い小石にしておくべきだが、「白い小石リスト」ならここまで一般的な呼び名にはならなかっただろう。
意味の正確さよりも意味の通りやすさの方が大事なこともある。
2

2017/8/4  23:18 | 投稿者: 時鳥

借景、という言葉を頭の中で転がしていた。
基本的に、景色というのはみんな借り物なんじゃないだろうか。
よほど広い庭や山を持っている人を除けば、家から見える景色は自分のものではない。
今、素晴らしい夜景の見える高層マンションだって、来年には見える景色が変わるかもしれないし、そうなったって文句の言える立場ではないのだ。
そう考えると、家の敷地の外にある周辺環境は、全部借り物だとも言える。
急行の止まる駅、すぐ近くにあるコンビニ、大きなスーパーマーケット、閑静な住宅街。
そういうものに魅かれて住まいを決めるけれど、ほんとはそれらは自分のものではない。
買ったつもりのものが買えていない。
物事が自分の予想外の方向に動き出した時、初めてそのことに気付く。
ひとしきり嘆いた後、考える。
あれが買値ではなく借り賃だったことを、次第次第に理解する。
2

2017/8/1  22:55 | 投稿者: 時鳥

銀座のエルメスには、「ル・ステュディオ」という小さなプライベートシネマがある。
休日のみの上映で、入場は無料だが予約しないと入れない。
演目は毎月変わり、上映の3週間前からWEBで予約が出来るのだが、最近、この予約が妙に取りにくい。
どうにか予約を取って行ってみると、場内は満員と言うこともなく、空席が結構ある。
金曜日の夜あたりに予約状況を確認すると翌日の空席があったりするので、予約をして直前でキャンセルする人がまあまあいるらしい。
本当に急用が入った人もいるだろうから、キャンセルは別にいい。
不思議なのは、どうしてこんなに混みはじめたのかだ。

今日、たまたまめくった夕刊で理由の一端を知った。
新聞の夕刊に、展覧会情報などと一緒にル・ステュディオの情報が掲載されていた。
なるほど、これは人が集まるわけだ。

私がル・ステュディオの存在を知ったのは、メゾンエルメスのギャラリーでだった。
そこで案内のフライヤーを手にしたのだけど、ギャラリーに来る人間は限られている。そして、エルメスでお買い物をする人とはあんまり重なっていない。
新聞ならもっと幅広い人の目に留まるし、新聞を取っていて夕刊の文化面を眺めている人なら、エルメスでお買い物する可能性はそこそこあるだろう。
お客さんになりそうな人を集めることが目的だとしたら、効果は高い。

さて、その記事によると、来月9月の演目は、マイケル・パウエル監督の「血を吸うカメラ」だそうだ。原題は「PEEPING TOM」。
・・・のぞき魔が主人公の、ホラー?
お客様予備軍を集めるためという仮説が崩れていく。
今月は「たそがれの女心」、先月は園子温監督の「ひそひそ星」だった。
ベル・エポックのパリ社交界の優雅な駆け引きと、畳敷きの宇宙船が星間を旅する静謐なSFの後に、これ。
振れ幅の広いラインナップ。
好きな種類の映画ではなさそうだけど、怖いもの見たさで行っちゃうかも。
自分では選ばないけど、人が選ぶなら見てみようかって心理で。
2




AutoPage最新お知らせ