2019/5/31  23:30 | 投稿者: 時鳥

早稲田大学の小野記念講堂でリーディング公演を観る。
読上歌舞伎『何櫻彼櫻銭世中』
という題がついている。「さくらどきぜにのよのなか」と読む。

「ヴェニスの商人」を大阪を舞台に翻案した作品で、
1885年(明治18年)、宇田川文海が大阪朝日新聞で発表した連載小説が人気となり、
同年、大阪戎座で歌舞伎が初演された。
ポーシャは中川玉榮、シャイロックは枡屋五兵衛というように
登場人物はみな日本語の名前を付けられ、関係性も整理されている。
明治期の歌舞伎台本なので、現代人には耳慣れない言葉も出てくるが、
そこは演出で適切に注釈を入れてくれるので、するすると内容が頭に入る。
演劇としてちゃんと面白い。
ストーリーとしてはヴェニスの商人なのだけど、導入部の作り方、見せ場の置き方、
台詞のやり取り、場面の切り取り方などは歌舞伎の文法に完全に従っていて、
歌舞伎ネイティブの底力を感じる。
歌舞伎の文法が体にしみこんでいて、どこの国の何の話であろうと
歌舞伎で語ることができる人々がわんさといたんだと思う。

日本で初めて翻訳上演されたシェイクスピア劇は1911年の「ハムレット」だが、
翻案上演は四半世紀前から始まっていた。
小説は明治の初期から翻訳が行われていたが、戯曲はまず翻案から始まった。
活字単独で勝負できる小説とは違い、戯曲上演は社会的文脈に大きく左右される。
観劇習慣、社会習慣、劇場の構造、演技など、各種ハードウェア、ソフトウェアが
上演に当たっては必要で、明治初期の歌舞伎全盛の社会にあっては歌舞伎に翻案して
上演するのが最適解だった、というのが上演前の解説でのお話。

ポーシャが学者の家のお嬢様で、家のために亡き父の弟子の内から
婿を取らなければならなくて、その候補者の一人がバッサーニオ。
シャイロックは娘ならぬ姪を女衒に売り飛ばそうと茶屋に連れてきていたが、
たまたま居合わせたポーシャが彼女を助け、自分の侍女にする。
ネリッサとジェシカの二人を合わせたような姪のお梅は、
アントーニオに気にかけられている。
シェイクスピアの戯曲は何本ものストーリーが同時進行しているが、
歌舞伎では適切に整理され、背景も納得できるものに読み替えられている。
しかし流石にシャイロックがユダヤ人であるということは拾いきれなかったのか。
ただの守銭奴、金もうけのためなら何でもする薄い悪役になってしまっていた。
シャイロックが差別されるマイノリティであるということが、
「ヴェニスの商人」という劇の厚みにつながっていると思うのだけど。

参考)
国立国会図書館デジタルコレクション
『何桜彼桜銭世中 : 花莚七枚』
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/896892

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2019/5/2  22:22 | 投稿者: 時鳥

4月30日17時過ぎ。
ぱちぱちとキーボードをたたいていると、いきなりインターネットに接続できなくなった。
室内モデムのランプが点灯していない。
電源をコンセントから抜いて、深呼吸を2つしてから再起動してみても、やっぱりひとつもランプがつかない。
さて、一大事だ。
作りかけていた打上花火プログラムは放り出して事態の収拾を図る。

契約時の書類を引っ張り出してサポートセンターの電話番号を確認。
5分以上待った末にやっとつながり、翌朝、作業員が来るということで話がまとまる。
ほっとしてふっと客観的になった。
この部屋はあまりにも汚い。

突如、大掃除が始まった。
掃除機をかけ、一部ぞうきんをかけ、なぜかトイレ掃除とアイロンかけをし、ハンドソープを補充する。
かくして、平成最後の夜は片付けで更け、令和最初の朝は片付けで始まり、部屋は何とか他人を入れられる状態に回復した。
いい加減に掃除をしろ、という天の声だったのだろうか、この故障は。

故障の原因は室内モデムが物理的にお亡くなりになったことで、機器を交換したらあっさりつながった。
きれいになった部屋と、慣れないことをしたせいか風邪をひきこんだ住人が後には残された。
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