こちらのブログには書いていなかったが、忠魂碑・忠霊塔に詳しい書籍『近代日本と戦死者祭祀』(今井昭彦・東洋書林)を購入、既に読み終えている。「忠魂碑・忠霊塔」という記事カテゴリさえこしらえている私だが、まともな知識は無いに等しく、忠魂碑=神道系で遺骨は納めず魂を祀る、忠霊塔=仏教系で遺骨を納めることを原則とする という基礎中の基礎すらようやくこの本で知る始末。不勉強を恥じる……と言いたいところだが、これ以外には忠魂碑・忠霊塔関連の図書ってほとんど無いからね……。この本だって一般向けとは言い難いし。
閑話休題この本は、緻密な現地調査と資料収集という真っ当な研究手法によって、「誰が、如何なる意図をもって、戦没者を祀るのか」を、予断を交えずにまとめあげた大労作。ただし、手法からすれば当然なのだが、扱っている地域が群馬県をメインとしたごく一部に限られているのが残念。同じ方法論で、他の地域で行った研究とかは学術論文をあたるしかないのか。そこまで熱心でもないんだけど……そもそもの研究が、一般向けの書籍にまとめられるほどに進んでないらしい。
例えば、これとはまったく別に読み進めていた『新編 新宗教と巨大建築』(五十嵐太郎・ちくま学芸文庫)という本がある。五十嵐太郎は建築史研究の専門家であり、特に宗教建築を主要な研究対象のひとつとし、一般向けの著書も多い。
にもかかわらず、『新編 新宗教と巨大建築』「4章 日本の近代宗教と建築」p231〜にはこんなくだりがある。「モニュメントとしての近代神社」の小項目のもと、「国家のために戦死した兵士を祀る神社」すなわち護国神社を取り上げているのだが、その後で「近代の戦争により多く建立された
忠霊塔」と書いているのだ。その後の話題は「軍神神社」だから、ここに仏教系である忠霊塔の話題が挿し挟まるのは不自然。おそらく、忠魂碑のつもりで忠霊塔と書いてしまったものと思う。
五十嵐太郎をして、それも、戦前の神社建築・寺院建築のあり方を比較した章において、なお忠霊塔と忠魂碑との区別がついていないのだ。これは「忠魂碑・忠霊塔」分野の研究の遅れを象徴するトピックかと思う(……なんて書き方はちょっと偉そうですが)。

2