ここでは「趣味の世界」を話題にしたいが,他の仕事の世界とか町内会とかあれこれあれこれも似たようなことかもしれない....ある「世界」「社会」には同じことに関連を持つ多くの人たちが存在しており,それぞれの人はその正確とか人生観とか哲学とか利害関係とかいろいろなことをベースにしてその世界で振舞うこととなる.その中で「経験豊かな先人」がいて「やる気満々の中堅」と「向上心がある新人」とか「素人の教えて君」とか「野次馬」がいることによる集いがあったり....はたまた「群れたがるヲヤジ達」の群れに迷惑な「お山の大将気質の人」とか,その「腰ぎんちゃく」とかいうタイプの方々がいて....ひとつの世界の中にいくつかの仲良しグループとか派閥とか,階層構造が生まれてくる....善しにつけ悪しきにつけ,この推移は必然なんだろう.
ここで扱っている観賞魚の世界でも昔々の時代には「師匠」とか「カリスマ」が君臨し,同じ志をもつ善良な人々とか,いろんな人が集まってなんとかクラブとかかんとか協会とかが出来たり消えたりしてきた....という話を聞いたことがある.わしはそのこと自体はアタリマエであって否定しない.....いやむしろ肯定的であって,そういう人々の動きがその世界そのものを強い力で発展させるものだと信じている.とはいえ,師匠同士が自意識過剰であったり,団体同士が反目,批判し合って,まわりの人たちに迷惑をかけたりすると,業界としてもマイナスだろう.で,近年についてはどうなのかというと,わしは別に業界通でもないし個々の人々をよく知るわけでもないが,たとえばメディアとかいんたーねっつの世界から情報を得る限り(もちろんウソも書いてあるんだろうけど,概ね....)この世界の人たちはとても仲良しなんだろうなぁと思う.プロ・アマチュアを問わず,この世界の中でトップレベルの実績,経験と技術を誇る何人もの「師匠」「大将」と呼ばれる人たちは,もちろんそれぞれの偉業に誇りを持っておられると思うが,お互いに相手を,そしてその仕事ぶりや,生み出す魚を高く評価し,リスペクトした言動を慎ましやかに繰り広げておられるようだ.もし考えを異にする場合があったとしても感情を高ぶらせて相手を愚弄するようなことはなく,まったりと大きな河の流れのように重ねられる業界の歴史....これはすばらしいことだと思う.このような人々の力で業界は大きく発展しているものと思う.
とはいえ,まったりすることは「厳しき規制」にうまくマッチせず「曖昧」を生みがちなところがある.それゆえ,潔癖な性格のこだわり派の方から見るとちょっと物足りない気分になる局面もあるようだ.たとえば,gup愛好家の大きな関心事のひとつに「品種名」というものがある.愛好家の皆様の間ではよく闊達な意見交換が行われているものと思う.ここでも,ずいぶん前に既に記事でわしの考えを書いている(
http://gray.ap.teacup.com/yochisblog/107.html).その要点はやはり「まぁイロイロあるけど,学術用語じゃあるまいに,業界ワードなんだからテキトーにまったり行きましょうや....」ということである.
で,「ジャパンブルー」というお名前がある.体側の後ろ半分くらいが空色に輝く性質につけられた呼称で,青色好きのニポン人気質にも合い,よく普及している.
ところが,これと同じ色を体躯に載せた魚に「アクアマリン」という商品名がつけられていることが多々あって,何だかよくわからない.聞くところによるとロングテールの魚にはこの呼称をつけるということが横行しているらしい.ショートテールはジャパンブルーで良いのかな?
まぁ,わしなどはこれの意味というか意義が全然わからない.誰がどういう経緯で言い出して,こんな状況になったのかも全然知らない.だが,きっと何か必然性があるんだろう.
以前,「ジャパンブルー」ってコトバとしておかしいんちゃうか?という意見を見聞きしたことがあり,どうやら「ジャパニーズじゃないからダメ」ということのようだが,わしはそんなことはないと考える:
ある事項を示す名詞の前に「国の名前」(名詞)を置いて修飾させる形容詞的な使い方は,国の名前の形容詞形に変えて付ける普遍的な方法とは異なるものの,別に文法的におかしくはない.ニュアンス的にも,たとえばいろんな国で同系青色gupが生産されているとして,アジアではこの青,欧州ではあの青,カナディアンにアメリカン,そしてジャパニーズブルーというのならバッチリだ(真っ赤なgupではこんな感じでしょ?).だが,性染色体のひとつの遺伝子座に載ってバ〜ンと爽やかな青を発色させるというとても強烈で魅力的でユニークな形質があったとして,さらにその商業的展開にニポン人が深く関わっているとして「ニポンを代表するgup色のひとつであるところの素晴らしい青ナリ」なる高い意識を表明するものとしてジャパン・ブルーということに何の違和感もないだろう.
あまり関係ないけど,世界各国にそれぞれ「園芸学会」があってアメリカンソサイティとかジャパニーズソサイティとか言うが,そういう学術研究団体のうち国内のものを束ねる日本学術会議というどえらい団体があって,これを英語で呼ぶときにはアタマにジャパンをかぶせたりすることがある(ジャパニーズとは言わない,・・・・ of Japanということはあるけどね).さらに全然かんけ〜ないけど,中国南部に産する果物のリキュールをベースにしたカクテルに「チャイナ・ブルー」といのがあるけど,チャイニーズブルーじゃないもんね.
でもまぁ,何はともあれ,gupの世界では「ジャパンブルー」と「アクアマリン」が,まったりとグダグダに併用されているようである.え〜っとぉ,繰り返すけど批判はしていない.まぁどっちでもいいじゃないかと申し上げているのである.いろんなところで混乱は起こるかもしれないけど,業界できちんと説明しておけば良いことである.
とはいえ,こないだ東京に行ったときに本屋で立ち読みした観賞魚雑誌に日本を代表するプロフェッショナルのご意見が掲載されているのを拝見した:
「日本の業界では1960年代のブームの頃から,海外で用いられている名称とは別に名前をつけるという伝統(?)がありますが,できれば統一したいものです.基本的には同じ表現に違う名前はおかしいので,先につけられた名前を優先するとか,何らかのルールが必要だと思います.ちなみに,欧米ではブルーグラスやギャラクシィ,ジャパンブルー,ラズリーなど,日本発の呼び方が定着しています.」
(無断掲載ですが商業目的ではないのでご容赦ください)
え〜とぉつまり,アクアマリンはダメということなのかな?よくわからないけど,まぁ,業界でチカラのある方が併用に否定的なお考えであって,公的な場でその旨のご発言があり,この状況を正して行こうというお考えが浸透するのならば,きっと関係者によってリーズナブルな取り扱いが整備されて,業界が健全な方向に行くのだろうなぁ,と思った.
これもまた素晴らしいことである.

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