エンドラ博士の卵胎生魚が普及する過程で,おそらく無数の遠藤男女がgupとの縁組に用いられたであろう.その過程の,かなり早い時期に,ブリーダさんや愛好家諸氏が尾の呪縛に気付いておられたことは想像に難くない.gupの中にも「プラチナ」などで尾の形成や伸長に干渉する性質はみられるが,遠藤から来るソレは,ただ伸びないのではなく,やや「丸める」というニュアンスがある点で一線を画す.
そもそもgupの短尾はソード無しソードで色なし透明なので,色つき短尾の形を整えるのには難儀する.ラウンドレース,スピア,ピン,それから形を整えるという点ではライアテールなんかも難物だ.ところが,色つきgupに遠藤を混ぜると仔からあっという間に丸い短尾が出現する.あまりに安直過ぎてすぐ飽きるくらいだ.
何となくまぁるい感じ,おわかりいただけると思う.
なお,いつも書いているが,わしはgupに遠藤混ぜしたもの,gupと区別しない.gupと遠藤の仔は「エンドラーズハイブリッドグッピー」ではなく「グッピー」と呼ぶ.古の時代に,南米でゴソーっとガサ入れされた小魚が,湿地帯のあちこちから港に集められて,まとめて船に乗せて大西洋を渡った....そこからgupの歴史が始まっているとしたら,丁寧にレティキュラータだけ選ってラベル付けて運んだなんて,そして,ヨーロッパに入ってから南米の熱帯卵胎生魚を種ごとに分けて混ぜないで飼育したなんて,どこをどうひっくりかえしてもそんなことがあったとはわしには思えない.それは,あくまでも,わしの想像の話ではある.しかし,もし肝心のコモン・グッピーが混ぜ混ぜでできているとしたら,21世紀になってから遠藤を混ぜたのを「グッピー」と区別して「ハイブリッド」なぁんて....というわけだ.
とはいえ,熱帯魚を愛好する人達が,gupに遠藤を混ぜたことを「付加価値」と捉えるならば,それはそれで何も言うことはない.たしかに色がキレイになるもんな.上述のはあくまでもわしの中の考え方であって,他所の方の所作に口出しするのは僭越な話だ.でも,混ぜ混ぜすると上述のようにヒレがまぁるくなりがちなので,三角尾びれを壊すという観点では,価値が下がってしまうような気がしないでもない.
一方,逆にgupが混じったのを「エンドラ博士の卵胎生魚」と称したら,それはイケナイだろう.市場において「混ぜてない」に付加価値を見出す人がいる以上,混ぜ物はあくまでも混ぜ物,商品表示はきちんとすべきであろう.
ま,商売は,売る人がいて,お金を出して買う人がいて,成り立つものであるから,双方ともウソをつかないで,納得して取引が成立するなら,それでひとまず世の中は丸く収まるのであった.もちろん,あまりいい加減なことを書くのは,業界における「エンドラ博士の卵胎生魚」の市場を適正に維持することに対して建設的な態度とはいえないのかもしれない.しかしまぁ,わしはgupひとすじのgup愛好家であって,他の卵胎生魚は愛好していないので,まぁそんなスタンスなのもご容赦いただきたい.

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