ちょっとしたきっかけで生じた思い込みから、いつの間にか頑なな対応につながっていたりする。たとえば、ずっと自らに「決めごと」としていたことがあって、ずいぶん後になってからその必然性にふと疑問がわき、「あれ、いつからこうだったんだろう?」と思い返してもリーズナブルな説明ができない....。今日はそんな反省文をひとつ。
世にある短尾gupの尾びれは「透明」でなければ概ね「紅斑」か「蛇紋」だ。少なくとも九州界隈では、暗色系で短い尾びれを見たことがなかった。そこで、あるとき、フルブラックとブルーテールを材料に「暗色で短い尾びれ」を具現化できないものかためしてみよう、できなくてもまずは暗色尾びれがどんな性質なのか体感してみよう(それまで飼ったことがなかった)、と思ったのであった。
ブラックは当時ご近所にあった熱帯魚店で仕入れることができ、その後「ダースベッピー」の作出に至ったことはここで何度も書いてきた。だが、身近で「ブルーテール」を見ることはなく、やむを得ずいんたーねっつのお力をお借りすることになった。リサーチの結果、当時ネット上で刺激的な情報を発信していたGCTさん=「グッピークラブ徳島(だったっけ、すみません、よく覚えていない)」のターコイズ・ブルーテールを手に入れた(2014年頃だったかな)。
そこからは、直系の子・孫を取り続けながら、そこから抜いた仔を他とのかけあわせに使っていた。結局、青色の短尾を作り出すことはできなかった。そのXリンク・ブルーテールの展開よりも、相方のターコイズ(Yリンク)のほうが使い道があった。ターコイズは「体側の青」として類似のジャパン・ブルーより薄く粉っぽい空色だったが、体表やヒレの発色に悪さをしない点がとても都合が良く、短尾系でも扱いやすい素材として重宝した。さらに、同じYリンクで体側の尻びれに近いところに大きな紅斑がでる性質があって、カラフルさを演出しているところも、ジャパン・ブルーより良いなぁ、と思わせた。
さて、そのターコイズ・ブルーテール直系。ある日その「直系で混じり無しのはずの群れ」のなかに短尾gupが混じっているのに気がついた。レースだ。
これはやっちまったな、作業を誤って別のレースgupが混じり込んだ、いわゆる「コンタミ」だ。最初の頃の魚が上述のような風貌と比較し、わしとこで保有していたレースのひとつがこんなようなものだったので:
これが混じったんだろうなぁと思って、それならいつでも作り直せるぜ。まぁ、捨てちゃうのもナニなので、とりあえず短尾の仔を分けて親子混泳継続で放置していた。そしてしばらくした後、このレースは予想もしない展開を見せた。背びれと尾びれに蛇紋に似たレースが色濃く広がるようになったのだ。
レースと言えばヒレの付け根とその周辺に薄く網目模様が出るくらいのイメージを持っていたわしは驚愕した。スネイクスキンでレースコブラを作ったのではない、新たな蛇紋尾びれの降臨を感じたのだ。こうして、コードネーム「ターコイズ・レース」が生まれた。
ただし、上述のとおり、第一印象としてレースとターコイズとの相性でこのような色柄を呈している....と、いつの間にか信じ込んでいた。これらの親子関係を確認したこは一度も無かったにもかかわらず、である。いつの間にか、現有のレースにターコイズ・ブルーテールをかけてこれができたんだ、と実際に確認していたつもりにさえなっていたように思う。々、仔を採るなかでそれは確信となって定着していたのだろう。
いつもだったら「新しいX、キタ――(゚∀゚)――!!」と、空振りでも大騒ぎするくせに、このメスを使って他の系統のオスと合わせて、たとえば「コーラルレース」とか「サンタマリアレース」とか作ってみようとも、これっぽっちも思わなかったのだ。今、思い返しても全然わからない。なぜだったのだろう?
というわけで、ターコイズ・レース。長らく子、孫と取り続けているうちに「仔が採れにくい」「体躯が健常な仔が少ない」という問題も有り、イロイロとやっていく中で、ついに次の仔を残せないまま、種親が尽きてしまうという、悲しいエンディングを迎えてしまった。そのときでさえ、他の系統なら「最後の1ペアから驚異の復活を!」とか頑張ってきたはずなのに、「あ〜、レースのメス、とれなかったなぁ、残念」というくらいだった。なぜかというと、(上述のとおり)現有のレースのメスを使えば、ターコイズは別系のYで持っているから、また作ればいいや、と思っていたわけだ(むしろ仔が採れやすい集団にするために、最初っから作り直そうという気があったのかな)。そして、早速その仕事に着手。ところが、わしが持っているレースのメスにターコイズYのオスをかけた仔のヒレにはレース模様が無く、ターコイズ・レースを再現することができなかった。すなわち、ターコイズ・レースの持っていたX染色体は、わしがずっと持っていたレースのものではなく、徳島のターコイズ・ブルーテールに混じり込んでやってきた、わしにとって新しい素材だったのだ。もちろんそれが、GCTさんとこでブルーテールXに短尾Xが混じって隠れていたのか、あるいはブルーテールのXにレースが入り込んでいてブルーテールが壊れて短尾が顕在化したのか、等々はわからないのだが。
なんということでしょう。わしは貴重な「ターコイズ・レース」=「短尾の2/3に広がるレース柄を呈するX染色体」を、永遠に失ってしまったのだ。思い返しても、迂闊な、悲しい物語である。検証もしないで「大丈夫、これとこれをかけ合わせたらまたすぐ創れる」と盲目的に信ずる、ということがどれほど愚かなことか。思い知ったね。
世の中で、市販されているgupの中にも、メヒココロンビア、サンタマリアダブルソード、ラズリー系、「ギンガ」という難しいヤツ....等々、「スネイクスキンではないのに、ウニョウニョ点々のレース模様を描いた尾 」を(隠し)持っている系統はいくつもある(あれ、これ全部アクアステーションで買えるじゃネ?)。しかし、発色は限定的で、たとえばレースコブラのような「ヒレにレース柄が広がる」というふうにはならないようだ。
ターコイズレースが持っていたあれがどこからやってきたのか知らないけれど、もしその源流をご存じだとか、今も持っている、という方がおられたら、ぜひ皆さんにご紹介いただきたいと思うところである。
やっぱ、ちゃんと取っとかないとダメだなぁ....。

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