熱帯魚の専門店とかホームセンターのペットコーナでも生体を売っているところは店員さんがプロであって、売ってお金を受け取った分の「飼い方指南」をする(魚は必ずしもその限りではないが、ペットの売買において取引業者が十分な説明をするのは法律で厳しく義務付けられている)。そして、その説明の内容はちゃんとプロらしく真っ当なものである。少なくともわしが出入りしているお店は全てそのへんを高いレベルでクリアしている。
大きな本屋に行けば、プロ・ブリーダや業界で認められた一流の育種家の手によるマニュアル本が売られている。お金を出せば、飼育に必要不可欠な知識、しかも正しい情報が、容易に手に入る。
まぁ要するに、知識はタダじゃないんだな、ということだ。
これに対して、いんたーねっつの世界でも、情報が満ち溢れている。どこが違うの?というヒトには、前者のような有料コンテンツは「受け渡される情報が一般化されたり第三者の目を通したもの」であり、後者のようないんたーねっつ界に一方通行で放り出される無料コンテンツはそうではない、という点だと、わしは説明している。後者の問題点は次の状況に尽きる:
「情報を出す側のヒトは自分が知っている(と思う)ことだけを知っている」
自分が知らないことは思いつきもしないので説明の中で言及しないし、そもそも自分がそれを知らないということに気がつくことさえできない。もし、他のヒトと検討・議論する場があれば
「アレは無いの?」「え?何のこと?」「お前、アレのこと、知らねぇの?」となって、「今さら聞けない」ような知識も機会あるごとに手に入れることができるだろうにね。
そんなふうに、一方通行で得意げに話をしているとき、もし聴衆のなかに
「こいつ、アレ、知らねぇな?」と気づくヒトがいるだろう。この過程で「無知なヒトの知ったかぶりにおいては、自分が知らないうちに恥をかいている」のであった。
わしは立場上、そういうようなお話をよく人前でさせていただく。なにしろ、生まれてこのかた60年ほど、虚勢を張った知ったかぶりで恥をかいて生きてきたわしなので、なかなか説得力をもって聞いていただけているようだ。
初めて魚を飼うにあたってgupを選んだヒト、あるいは他の魚をこれまで飼ってきてgupにあらためて手を出そうとするヒトには、ぜひ正しい知識を手に入れて楽しいgupライフをすごしてほしいものである。
わしも、この BLOG talk では「わしはこんなことをしてます」とは書くけれど、それは自己顕示欲の発露に止まり、これをヒトに薦めたり教えたりするのはできるだけ避けるようにしてきた。なにぶん、わし自身がきわめて偏った知識しか持ち合わせていないし、一般的には他人からは褒められない風合いの飼い方をしているからだ。
さらに、他のヒトがネット上でチュートリアルを行っている場面には近寄らないようにしている。見ているうちに、教えていることにケチをつけたくなるからだ。わしを含めた、日頃から知ったかぶりが得意なヒトは、他人の知ったかぶりに対して「近親憎悪」で悪意ある攻撃をやりたくなる、という性癖を持つ。「何も知らないくせに、純真な初心者相手を騙してマウント取ってんじゃねぇよ」というヤツだ....そりゃ、トラブル一直線だよな。
そんなわけで、今日も手持ちの魚を愛でて、自己満足に浸るのであった。
とはいえ、わしも昭和生まれの老害なので、時々余計な説教話を書いたりするわけだ。先ほどから上に書いている話とか、以下の「コトバ」の問題とか、ね。
先日、gupは「卵胎生魚で幼い魚を産むんだけれど、誰にも容易に理解できるように『産卵』と表現する」旨のマニュアル文を見たが、これは筋が悪い、とわしは思うぞ。「産卵」は明らかな誤用だし、そもそも水生生物には「メスの体の中で卵が孵って、子どもかたちで外に出てくる」タイプの生き物が少なからずおり、それゆえに水産の業界では昔から広く「産仔」というコトバが用いられてきた。ポエキリアとかばかりじゃなくて、海の鮫とかカサゴとか、あぁ魚じゃなくてもミジンコなんかでも使うなぁ。これが「産子」とは異なるところにもそれなりの理由がある。なぜ、近頃の愛好家の方々があまり産仔という言葉を使わないのか、よくわからないのだが、少なくとも初心者に講釈をたれる立場のヒトは「適切なコトバが無いので『産卵』と称する」なんて怪しげなことを言わずに、ちゃんと調べて「産仔」って書いてほしいなぁ、と思うのであった。ま、趣味の世界なので、好き好きにやってもらえれば良いんだがなぁ。
まぁ何て説教臭いお話でしょう....!

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