2019/8/6

金魚  
 夏になるとなんとなく思い出すんだけど、小学校を卒業した時のこと

 1年生の女の子が、なぜか短い手紙を新しいノートに挟んでプレゼントしてくれたんだ。
 手紙には「理子さんへ、ありがとうございました」って書いてあって、はて1年生に知り合いはいなかったはずなのにと「???」のままありがとーと受け取って、そのまま卒業して翌日には引越しをして、すっぱりその町からは離れてしまった(引越しは前から決まってた)

 半年くらいたってから、そういえば1年生が入学して数ヶ月、掃除の手伝いの当番に行ってたなと思い出した。
 入学したてのちびっこたちに、掃除の手順と掃除道具の場所とか片付け方を教えるのを6年生がやってたのね。
 あるとき、担当の隣のクラスで叫び声があがったので覗いてみたら、金魚の入った水槽が床に落ちて、1年生たちがびちびちしている金魚と水槽の残骸のまわりでこれまた金魚のように飛び跳ねながら半泣きでうろたえていたのね。

 そうだよなみんな苦しんでる金魚に目が釘付けになっちゃうなと思って、いそいで隣の教室のポリバケツ洗って水を汲んで持って行き、1年生たちには「ガラスがあるからちかよらないで、ぞうきんだけ集めてきてー」と頼んで金魚をバケツにひょいひょい放り込んだ。

 ほんとは水のカルキを抜いてないからよくないんで、この金魚は別の水槽に入れてもらえるように先生に頼んできて、と誰かに指示して、とりあえず私は水槽の破片を集めて新聞紙にくるんで、1年生に手伝ってもらって水も処理して、終わったら隣のクラスに戻って掃除の手伝いの続きをやって帰った。

 その間一度も名乗っていないし、正直1年生の子の顔も全く覚えていなかった。
 そもそも私は頭が悪かったので、小学校で友達が一人もいなかったし、学校ってのはそういうものだと思っていた。人を覚えないというのは、人間関係を作ろうという努力をしてこなかったんだろうな。

 だけど1年生のその子は、私の名前を誰かから聞いて手紙を書いてくれたのか、別に必要でもないのに。
 半年もそんなことに気がつかないでぼんやりしていたとは、ほんとうに私は頭が悪かったのだな。

 夏になって店先で金魚が泳ぐ姿をみてやっと思い出した事なので、8月はそんな仕切りなおしの月です。
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