八幡探訪(番外)道鏡事件舞台裏SS

2014/8/30 | 投稿者: ghost

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今日は石清水八幡宮、その他諸々を訪ね歩いてきたのであるが、これについては後日に送る。で、ちょっと趣向を変えて、続日本紀の行間をボクの妄想で埋め何を以って前稿のようにボクが考えたかを示すショートストーリーで以ってお茶を濁したい。

*     *     *

孝謙帝「父上(聖武帝)は仏様が治める国を作りたかったのよね。はて、今更子ども産む気にもなれないし、いっそのこと道鏡が天皇になってくれないかしら。でも、そんなの誰も賛同してくれないわよね。」
阿曾麻呂「ここはひとつ、お父上のなさり方に倣うのがよろしいかと。わたくしめにお任せあれ。」

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阿「……と言うワケで、帝は道鏡殿への譲位をお望みじゃ。」
八幡宮司「……いや、そりゃいくらなんでも空気読まなさ過ぎでしょ。」
阿「聖武帝の大仏建立もそう言われたものよのう(チラッ)」
八「(えっ?)」
阿「どこぞの神が帝の思し召しをお察しくだされば(チラッチラッ)」
八「……あー、はいはい託宣くだりました『令道鏡即皇位。天下太平。』と八幡様が仰せです。」
阿「おぉ、八幡様の仰せであれば仕方がない。」

阿「……と八幡様が仰せです。」
孝「やったー!!そういうワケだから道鏡、よろしくね。」
道鏡「……ちょwww(ただでさえ出世妬まれてんのに、んなことまでしたらオレ、確実に殺されるwww)」

道「……と言うワケだからさ、法均(孝謙帝側近の尼僧で清麻呂の姉)。頭の切れる弟君に帝を諌めてもらえない?」
法均「……と言うワケなんだけども、清麻呂。よろしくね。」
清麻呂「承知。」


清「帝に言上いたしたき儀が。」
孝「(おぉ、託宣を聞きつけて早速賛同しに参ったか!)」
清「我国家開闢以来。君臣定矣。以臣為君。未之有也。天之日嗣必立皇緒……」
孝「(ブチッ)だまらっしゃい!おまえなんか今日から穢麻呂、姉は広虫。都から出ていけー!!」
(清麻呂、改め穢麻呂一旦退場)
道「(おいおい、マジかよ……)」
孝「はい、八幡様も言ってるし、これで道鏡を次の天皇にするしかないっしょ?(チラッ)」
藤原永手「(いくらなんでもそりゃねーよ、でも帝に真正面から噛み付いて藤原儚手、とかに改名されたらかなわんしなぁ……)」
孝「(……あれ?何で誰も賛同しないの?)」
道「(頼む、みんな帝を無視してー)」
藤「(こりゃ、帝が飽きるか死ぬまで、無視の一手だな)」
孝「(……あれ、何でみんな黙ってんの?これって、また藤原仲麻呂のときみたいに謀反するってこと?)」
道・藤「(触らぬ神に祟りなし)」
孝「(マジで?)」
阿「……」
孝「(ちょwwwなんで阿曾麻呂まで黙ってんのよー!!)」
道・藤「……」
孝「(あー駄目、沈黙に耐えられない!)……えーっと、次の議題なんだっけ?」
道・藤「(ほっ)」

かくして、誰もこの話題に再び触れる空気にならないまま、1年たって孝謙帝崩御。

藤「あーぁ、後継者決めないまま、帝死んじゃったよ。」
(沈黙)
藤「とりあえず白壁王で……いいよね(チラッ)」
(沈黙)
藤「(……やべーよ、ただでさえ皇統の横滑りで危うげなのに、これでマズったら全部オレのせいになるじゃん)」
道「重用くださった帝が亡くなって辛いので職を辞し、都を離れたいのですが……」
藤「あ、道鏡まだいたの?好きにしていいよ、おつかれー。」
(道鏡退場)

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藤「(……あ、いいこと思いついた!)おい、八幡さん。」
八「は?」
藤「いやぁ、先帝の勇み足を諌めてくれありがとうね。」
八「……え!?」
藤「穢麻呂……いやもー清麻呂でいっか……清麻呂に我国家開闢以来〜って帝を諌める託宣くれたでしょ?」
八「いや、我々はその真逆の……」
藤「(チラッ)」
八「(え?)」
藤「(チラッチラッ)」
八「(だって、あれは向こう見ずな清麻呂さんが言ったことでウチは関係ないのに……)」
藤「(チラッチラッチラッ)」
八「(え〜、また〜!?)あー、はいはい左様です。最初の託宣は阿曾麻呂の偽作。清麻呂の伝えた託宣こそ本物で御座いますとも。」
藤「(まだちょっと弱いな……)っつーかさ、八幡さんって、そもそも何で皇位に口出すワケ?」
八「……えーッ!?」
藤「豊後の国の神様が、なんで恐れ多くも皇位継承に口出しすんの?って訊いてるの。」
八「(ちょwww勘弁してよ、巻き込んでんのあんたらじゃん!!)」
藤「ひょっとしてさ……八幡さんってば、天皇家の霊なんじゃねーの?(チラッ)」
八「え?」
藤「古くは新羅の僧侶が草薙の剣を盗んで逃げようとしたのを未然に防いだ、とか言ってるじゃん?ソレって、やっぱ、八幡さんが天皇家に縁のある霊だからでしょ?(チラッチラッ)」
八「(何と言う無茶振り……とりあえず適当な名前を……えーっと新羅を攻めた神功皇后……は話が出来過ぎだし、女帝が話ややこしくした直後だけにマズいよなぁ……皇后の胎中の皇子……誰だっけ?)あー、ほむ……ほむ……むにゃむにゃ」
藤「おーい、誰か調べて。」
官吏「応神天皇が、ほむたのすめらみこと、にておわします。」
藤「そういうことだよね?(チラッ)」
八「……あっ、は、はい、左様で御座います。」
藤「いやー、ありがたい!応神帝が新しい帝、白壁王をご後見下さるとは!」
八「(……コレはコレでありか?いや、こうなった、ってことは案外そうなのかも)は、はい、左様で。いと目出度きことにて御座います……つ、ついては、ご即位の際には伊勢神宮のみならず、我らが宇佐八幡宮にも報告使をば(チラッ)」
藤「……え?」
八「いや、八幡様がご後見申し上げるからには、新帝即位の都度お知らせいただかないと……(チラッチラッ)」
藤「(……マズったかなぁ、ただでさえ伊勢の偉そうな連中の相手すんの面倒なのに)も、もちろん、皇位をご後見くださる八幡様に勅使を差し上げないと失礼極まりないですからな。そうだ!これも何かの縁ですから清麻呂を遣わすように致しましょう。」
八「……え?」
藤「ですから、和気清麻呂が勅使として宇佐をお訪ね申し上げる、と。」
八「(真相を知る者を送り込んで来るとは……これはお目付けか?まぁ、適当に脇の神にでも祀り上げて丸め込んでしまえば……)も、もちろん、わたくしどもも和気様を歓迎申し上げましょう。」
藤「いやぁ、丸く収まって良かった。それにしても、道鏡、悪いヤツでしたねー(チラッ)。」
八「……え?」
藤「いや、道鏡、こともあろうに皇位を簒奪しようとしたでしょ?(チラッチラッ)」
八「(もう好きにしてよ)あ、あーはいはい、そうですな。我らが八幡様も護国のため、これを見過ごすことが出来ず、無礼を承知で皇位継承に口出しいたしたワケで。」
藤「いやいや、今後とも八幡様のご加護をお願いしたい。我ら藤原北家も八幡様に及ばずながら皇室と天下万民のためご加勢申し上げる次第。」
八「幾久しく。」
藤「あ!おーい誰か、別に急がんけど穢麻呂……じゃなかった、清麻呂がどこに飛ばされたか調べてー。」

*     *     *

もちろん以上は冗談なのであるが、一方で、日本人の意思決定プロセスというものは、存外今も昔もこんな感じでおこなわれ続けているような気もする、という意味で書いてみた。なお、八幡神=応神天皇説が永手と八幡宮司の謀議によって生まれた、というのは完全なフィクションである。が、この事件を通じて、それを公言しても問題視されない、あるいは、公言した方が八方丸く収まる的な空気が醸成された、とは言えるかも知れない。

ところで、面白いのは(と自分で言うのもおかしいが)これらの登場人物のうち、現在に至るも神として祀られているのは、八幡神は当然として、和気清麻呂だけだ、というのが実はこのSSの隠れた(隠してないじゃん)主題である。

この八幡探訪シリーズでは、日本の“神”とは、個人から見てアンコントーラブルな意思すべて、という仮説が通底してるんだけども、逆に言うとこれは、独立した個人の意思を発揮する人間(この例ではただひとり空気を読まずに孝謙帝を諌めた清麻呂、史実かどうかはこの際どうでもよくて、周りからどう見えたか、が問題となる)はもはや“神”なのであり、さらに逆に言うと、独立した個人の意思を発揮せず空気を読むばかりの存在こそが“人”である、ということも含意してたりするワケ。考えてみれば、生前の菅原道真なんかも空気読めない感バリバリだし、天神なのに。合掌。

つづく>>



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