雑誌『AERA』に「オタクの論点1 鉄ちゃん激論 最強の私鉄はこれだ」という記事が載っていた。インターネット上でのアンケート結果とコメントに基づいて構成された見開き2ページの記事だ。そも最強とは何ぞや、という定義など気にせずに意見が集まってしまうあたりが、実にオタク的である。
さて、結果を見てみると、東日本では京浜急行が、西日本では近鉄がダントツで、2位以下は京王、東急、小田急、阪急……というまずは順当な結果となった。
順当な結果といえば、あの私鉄に一票も入っていないのもまず順当ではある。
「2府4県にまたがる路線はやはり最強といえるのでは」
とは、近鉄を推薦してのコメント。しかし1都4県にまたがる、営業総延長は東日本で一番(だが日本じゃ2番だ)には票が入っていないのだ。
それは、そう「東武鉄道」。いやまぁ実際の話、下町浅草から北関東へ向かうという点でドンくさいイメージが付いているのか前々から今ひとつ不人気だし(池袋から埼玉というのもねぇ…)、新型車投入ペースは遅いし、普通に思いつく範囲では「最強」と呼べる要素は確かに無い。
だが私はあえて言おう。東武鉄道は最強を超えた
超最強の私鉄であると。
最強とは? 「比べ合い、競い合ったときに勝ち抜く力があること」だ。ならば、現実に競い合い、見事なまでに勝ち抜きながら、しかる後に競争を止めてしまった者は……かつての競争相手と手を携えてひとつの道を行くことを選んだ者は、
最強以上と賞賛されるべきである。
東武鉄道はまさしくそれだ。昭和30年代、本来なら競争相手になどならない強大無比な国鉄を向こうに回し、国際的観光地・日光への旅客輸送を巡って激しい競争を演じて、完全勝利を収めた。それが2006年、かつての因縁を水に流し、技術的な壁もまた乗り越えて、JR新宿〜東武日光の相互乗り入れを実現させたのである。
そう、
競争よりもはるかに大きな価値のある「和平」を実現したのだ。この観点からすれば、東武鉄道が
超最強の私鉄である、という評価に反対する者はあるまい。
……そこで「ま、その事実をそうした観点で見た場合にのみ、言えることだけどね」とか言わないように。

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