「黒く塗れ by the Rolling Stones」
GUPs
ここ、BLOG talkでは、九州界隈でも容易に手に入るようなありふれた素材を使って,皆が知っているようなことを,自分の手でやって自分の目で確かめる....というコンセプトでgupの記事を書いている。だから、新たな激レアもののお披露目、小難しい理論、指導的論説等々は無く、「沼」にもはまってないし、可愛らしいもんでしょ?
今回の話はわしが過去に地元で体験したことで、昭和からの九州界隈限定の一般的熱帯魚事情の話なので、大都会はもちろん外国とかにはナニがあるとかアレがあったとか知らないものは知らないよ。今はひとつも持ってないので画像は全て再掲なのはご容赦。
テーマは「黒く塗れ」(って、たしか故・筒井良樹さんはキース・リチャーズのファンだったんだっけ?わしはテレキャスターのペキョペキョした音はあまり好きではなかったなぁ、って、これは脱線話)。
わしが小僧の頃には、お店で実物を見ることができる「下半身が黒いgup」はシンガポール産ゴールデン体色で白い背びれと赤い尾びれのタキシードの一種類だけだった。高校に進学した頃だったか?ネオンタキシードが登場。深い青光りに魅せられたものだ。
次いで、白い尾びれのタキシードが国産gupの主役に躍り出た。
同じ頃、ワンコインgupのラインナップに黒い尾びれのタキシードが加わった。俗称でタヌキとか呼ばれ、頭のあたりふつうの野性体色なのに、胸鰭の後ろあたりから下半身と尾びれは真っ黒で、薄黒い胸鰭をパタパタさせる様子が印象的だった。
これらは、下半身が暗色で均一に塗り潰されていた。背中側にわずかに明色の輝きがあったが黒い部分の色は濃く、これに模様が入りそうな雰囲気は全く無かった。中でもネオンタキシードの黒は濃く、胸鰭は薄く墨が入る風合いだったと思う。これらはXリンク、Yリンクの双方が存在しているようだった。
体側の「黒塗り」というともう一つ。モザイクgupでは、尾筒端:尾の付け根部分が暗色を呈する、というのがある。
Xリンクの黒斑は尾筒にある他の発色を塗り潰し、「モザイクなんとか」系統においてモザイク尾らしさを演出する。
ただし、これは上述のタキシードほど広い面積を覆うものではない。尾がモザイク調で下半身が黒塗り潰しとなるタイプは古くからあって、「タヌキ」と相前後して店頭で見るようになったと思うがこれにスネイクスキンを混ぜたような「上半身コブラ・下半身タキシード・variegated尾」というギラギラした魚がアジアから入って来ていて、商品として「ドラゴン」というような符丁があてられていた。この下半身も深い真っ黒に塗り潰されていて模様などこれっぽっちも見えなかった。
実はわしは「コブラを塗り潰す」冒涜が相容れず、このタイプが好きではなかった。店頭で見てもあ、そう、という感じでスルーすることが多かった。それで気が付くのが遅れたのかもしれない。21世紀になって、福岡市内で卸屋さんと小売りを兼ねていたお店をしばらくぶりに訪れた際に、おかしなプラチナタキシードが泳いでいることに気づいた....。というか、ちらりと、黒いグラステールに見えて「え?これ、何?」「グラスタキシードとか無いよな」と思って立ち止まって眺めたらプラチナコブラだったという不思議な体験だった。
一度はスルーして、半年後にアテメスとともに導入、しつこい病気と闘いながらオスの再現型っぽいものを得たのだが、その経緯は過去にここで書いた。
なんと恐ろしい。この魚はタキシードと同じ半黒なのに、濃淡があって模様を描いているのだ。他と掛け合わせることで、Yにプラチナとスネイクスキンが相乗り....というのがわかった。ただし巷のギャラクシィとは色調が少し違うのかもしれなかった。で、Xリンクはコブラに似たvariegated尾だが交雑後代のメスの尾は「薄墨」なのだが個体により「かなり黒っぽい茶色」になることがあったようだ。
この頃、都会には黒っぽいプラチナレース(またはプラチナコブラ)で「プラチナショッカー」と呼ばれるものが流通していたそうだが、それとわしが手に入れたコレが同じものか派生系などの別物かはわからない。
なお、このお店では「メドゥーサ」と水槽に書いていたもののタキシードと思っていたのか、そのようなメスがアテられていて、そちらの仔を採ったらvariegated尾のタキシードだった。これは黒いコブラとは明らかに異なるものだった。
で、Yリンクのプラチナコブラを活かそうとオレンジ尾を合わせたところ後代で2つの楽しいタイプが生まれてきた。
どうも黒くなるための要素にXリンクだけでなく常染色体リンクのものがあるらしい。
さて、この後にやっと九州界隈にフルブラックが流通してきた。実はショッカーの前の黒っぽい魚としてモスコーブルーというのが都会にあったが、それが九州界隈の店頭に並ぶのはずいぶん待たされてしまい、フルブラックよりもずっと後になったし、両者の混じりらしいバッタもんも見受けられた。
フルブラックの尾はたぶんXリンクだろうなぁと思ったので、Yリンクに何があるのか興味を持った。上半身を真っ黒にするのかと推測し、色なしメスにかけてみたら
このようにフルブラックのYは体側(主に上半身)をセピア色で塗り潰すものだろうというのがわかる。黒の濃さが異なる個体が混じるのは黒が常染色体リンクで分離しているのだろうと推測した。黒の色素量がホモとヘテロで違うのか、複数の遺伝子座が力を合わせて黒を蓄積してゆくのか、はわからない。
で、この頃になってくると、体側の黒の上に何か模様が出る、というのもあまり珍しくなくなって、見ても驚かなくなってきた。そうなるとまた「タキシードだと尾びれは立派になるけど、体を塗り潰しちゃうからな〜」と組み合わせに悩んだ日々も懐かしい。
というわけで、九州界隈の黒塗り事情。アジアからのワンコインgupの中のドラゴン(商品名)までは黒塗り潰しのタキシードで、プラチナショッカー(商品名・推定)からは模様ができる半黒。国産系として高値がついたフルブラックは(遅れて入ってきたモスコーブルーも)後者と共通点アリ。こんなもんでしょうかね?
繰り返しになるが、都会や外国とは、時系列的にもタイプについてもいろいろと相違があると思う。あくまでもわしのまわりで流通した魚たちのお話ということで、よろしく。

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