また,12月がやってきた.
gup愛好家で,比較的年齢が高いほうの方々がよくご存じかと思うが,亡くなられた業界のカリスマ,故・筒井さんというと,本業は熱帯魚屋さんであったと思う.わしは2回(だったっけ),お店でご尊顔を拝したことがあるだけで,よく知らないのだが,この方,芸術的素養に富んだ方だったようだ.業界関係のライターでもあったものの,わしはこの方の文章があまり好みではなかったので,あまり印象が残っていないが,絵画に関する造詣が深く,芸術的写真を撮ることは皆さんもご存じであったろう.
いきなり何が言いたいかというと,gup屋さんって,生業とは別なところで妙に輝く才能をもっているものなのかなぁ,と,ちょっと思ったのであった.
上述の故人じゃなくて,現在ご活躍の魚屋さんの話なのだが,いんたーねっつでご披露してる文章が巧みなのである.不思議にも,どこがどうってのはあまりわからなくて,ここで詳述できない.でも,読んでみると,なんかピッとひきつけられる読み物になっているのである.gup愛好家の方々の間でも「この人,文才あるなぁ」とのことにハゲしく同意していただけるものと思う.業界誌とかライターが活躍する場ってぇのは,こういう能力のある人材がが必要なのではないだろうか.タダで読めるいんたーねっつに書くのはもったいないのではないか?と思うくらい「ピッ」としているのだ.
ちなみに,わしなどは,もう9年もBLOG talkを書いてるが,ご存知のとおり全くアレである.いやいや,そもそも,この25年の間,文章書きはわしの主要な仕事のひとつなのだが,文章が書けないことで苦労することばかりだ.昔からお世話になっている先輩からは長年にわたり「なぜわざわざそのように書くのか」と教育的指導を受け続けている.おそらく,よくここを訪れる多くのgup愛好家の方は,先輩が「そのように」と言っていることが「どのような」ことなのかおわかりだと思う.いや〜,書いて書いて,読み直して,書き直して....ってやると,何を書いてもこんな文章になるんだよなぁ.やらずにはおれないっていうのか,こういうのを「カルマ」というのかしら?
さて,そんなわけで,gup屋さんの生業とは異なる「才能」に思いをはせる日々だ.他の熱帯魚屋さん各位にも,きっとそういう才能が....と想像すると楽しい.ペットショップオーナーなのに環境保全とか農業に詳しくていろいろ活動してる,とかもこれに当てはまるかな?あるいは,きっと,あの大将さんにも秘めたる伝家の宝刀があるのかもしれない(想像).
さて,ところで,わしの生業の関係だが,なんか近年はずいぶんサボっていて勉強不足なのだった.そんなある日,というかつい先日,職場の同僚の先生からひとつの論文を紹介された.自然科学誌としてたいへん高い格付けのアレの電子版の新しいヤツから採ってきていただいたようで....って,見るとgupの研究論文だった.
あのなぁ,わしは野菜のハウス栽培の実験が仕事だべぇ!?魚はサブテーマよ?サブ?わかってる?いやいや,ご紹介いただいてたいへんありがたいことである.こんなの出ているって全く知らなかった.
しかしまぁ,この21世紀のこの世の中で,まだgup生態学の論文がネイチャに載るんだ.凄いなぁ.フロリダの偉い先生たちの仕事で,さすがネイチャ掲載だけあってカッチリ仕上げてある.内容を日本語で紹介するのにも「権利」が関わってくるので詳しくは書けないが,河に住んでいる群れの中にたっくさん男の子がいるとき,だいたいみんなこんな色をしてる....という中にちょっとめずらしい別の色柄をした子がいると,そいつのほうがモテて女の子をゲットできやすいのだという.転校生の男の子のほうが女の子に人気があるってかぁ?結果的に一般的でないタイプの子孫はメジャーな集団に埋もれてしまうことなく,えこひいきされて遺伝的に保存される.というようなことが書いてあるらしい.
え〜っと,そういうことならば,レティキュラータがバラエティに富む,個体群内に「様々な色柄タイプが見られる」という形態的多型が保たれることを説明してくれるような成果なのかな.違うタイプが混じったり,新たに出現したりすると,そういうのはどんどん残っていくシステムになるんだろうか?
というような内容はさておき,ちょっと興味があって,しかもお時間のある方は「Nature vol. 503 (7 November 2013)」に載ってるので, nature12717 とか nature, guppy, 2013 とかで検索していただくと出てくるので,最初のページにある写真を見ていただきたい.同じ個体群のなかにいるオス6タイプの写真で,黒点とか紅斑とかレースとかソードとか,愛好家としても見ごたえがあるなぁ,と思った次第である.
いや〜,gupって楽しいものだなぁ.

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